公益財団法人東京都予防医学協会

新生児の健診(一般の方向け)

新生児マススクリーニングとは

新生児マススクリーニングは、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査です。
検査で陽性を示した赤ちゃんは、専門医の診察を受けます。必要に応じた治療や生活の指導により、障害の発生を防ぐことができるのです。
この検査は日本全国で公費により行われています。
本会は東京都産婦人科医会と専門医の協力を得て、全国に先がけて1974年から検査を開始しました。
当初5種類の疾患を対象とした検査も、近年新しい検査法が開発され、検査できる疾患が大幅に増えました。2012年度からは19疾患を、2018年度からは1疾患追加して20疾患の検査を行ってきました。そして現在、東京都では2024年度から独自に6疾患を追加し、26疾患を対象に公費による検査が行われています。
本会では50年間でおよそ460万人のスクリーニングを実施し、病気が発見された子供たちは、適切な治療を受けて元気に育っています。

先天性代謝異常等とはどんな病気なのでしょうか

検査によって発見される疾患の特徴をご紹介いたします。

①アミノ酸代謝異常症(5疾患)
疾患名:フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、シトルリン血症Ⅰ型、アルギニノコハク酸尿症
概要…特定のアミノ酸が体の中で代謝されずに蓄積し、発育・知能の障害やけいれん発作など、関係するアミノ酸の種類により様々な症状を引き起こします。
治療…関係するアミノ酸が除去された治療用ミルクによる食事療法などの治療を永続的に行うことで健康な生活を送ることができます。

②有機酸代謝異常症(7疾患)
疾患名:プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、イソ吉草酸血症、グルタル酸血症Ⅰ型、メチルクロトニルグリシン尿症、複合カルボキシラーゼ欠損症、3-ヒドロキシメチルグルタル酸血症
概要…アミノ酸の分解途中でつくられる有機酸が体内に蓄積して、新生児期や乳児期に血液中のアンモニアが異常に高くなったり、強い嘔吐や意識障害、けいれんなどの症状が出現します。このような症状は赤ちゃんの発達や発育にとって有害で、後遺症が残ったり、ときに致命的となることがあります。
治療…治療用ミルクなどの食事療法のほか有機酸の蓄積を抑えるための薬で治療します。

③脂肪酸代謝異常症(5疾患)
疾患名:中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、三頭酵素欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅰ欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅱ欠損症
概要…体内の脂肪からエネルギーを作りだす過程が障害されているため、発熱時や絶食時にけいれんや意識障害を引き起こします。重症型では突然死をすることもあります。
治療…長時間の絶食を避け、発熱や嘔吐などで十分に食事が取れないときは糖分を摂取するなどエネルギー低下を避けることで、発症を防ぐことができます。

④糖代謝異常症(1疾患)
疾患名:ガラクトース血症
概要…母乳やミルクに多く含まれる乳糖の成分であるガラクトースを代謝する過程が障害され、哺乳力低下、体重減少、肝機能障害、黄疸等がみられたり、白内障を発症することがあります。
治療…早期に乳糖やガラクトースが除去された治療用ミルクなどによる食事療法を行うことで発症を抑えることができます。

⑤先天性内分泌疾患(2疾患)
疾患名:先天性甲状腺機能低下症
概要…神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないため心身の発育不良を起こします。
治療…ホルモン補充による治療を行います。早期に適切な治療を開始すれば正常に発育します。

疾患名:先天性副腎過形成症
概要…副腎で作られるホルモンが正常に分泌されないため生命活動の維持に必要なナトリウムやカリウムなどの体内バランスが崩れ、副腎不全により死にいたることもある疾患です。一方で、男性ホルモンが過剰に分泌するため女児の男性化を引き起こすことがあります。
治療…必要なホルモンを補うなどの治療を行います。早期の発見により副腎不全などの重篤な症状を抑えることができます。

また、東京都では2024年度から以下の6つの疾患が公費の対象疾患に加わりました。

⑥小児神経疾患(1疾患)
疾患名:脊髄性筋萎縮症
概要…生まれてから徐々に全身の筋力が低下する疾患です。重症型では、呼吸に関わる筋力も弱くなるため人工呼吸による生活が必要で、早期に治療を開始しないと90%以上が死亡するとされています。
治療…新生児期に発見し、筋力低下が進行する前に治療を開始することで発症を抑えることができる治療薬があります。また、さまざまな症状が引き起こされる合併症に対する治療も行います。

⑦原発性免疫不全症(2疾患)
疾患名:重症複合免疫不全症
概要…生まれつき免疫力が弱いため乳児期から感染症を繰り返す疾患で、免疫不全症の中で最も重症型です。特に、病気と知らずにBCGワクチンやロタウイルスワクチンを接種すると重篤な副作用を生じることがあり、これらの予防接種の前に発見して治療を開始する必要があります。感染症を契機に1歳までに死にいたることもある疾患です。
治療…抗菌薬の投与、免疫グロブリン製剤や造血幹細胞移植などの治療を行います。感染症にかかる前に治療をすることが重要です。

疾患名:B細胞欠損症
概要…主に男児におこる疾患で抗体を作る細胞が不足しているため、母親からの免疫が減り始める生後3~4カ月ごろから感染症にかかりやすくなります。
治療…免疫グロブリンなどを投与して体内に抗体を補充し、感染症の重篤化を防ぐ治療をします。

⑧ライソゾーム病(3疾患)
疾患名:ポンぺ病、ムコ多糖症Ⅰ型、ムコ多糖症Ⅱ型
概要…細胞内小器官のライソゾーム中の酵素の障害によって糖質や脂質が分解されずに蓄積し、脳・心臓・骨・全身の筋肉などさまざまな臓器に障害を引き起こす疾患です。ポンぺ病の重症型では致命的となる場合があり、乳児期の早期診断・治療が極めて重要です。
治療…酵素補充療法や造血幹細胞移植が主な治療法です。早期に治療を開始することで、発症や症状の進行を抑えることができます。

検査はどのように行われるのでしょうか

病院では、生まれた赤ちゃんが日齢4日から6日になると、踵からほんの少しの血液をろ紙にとります。
このろ紙血液は本会に送られて、先天性代謝異常等がないかどうか検査をします。検査結果は病院から保護者に報告されます。

採 血

出産した医療機関等に検査申込書を提出し検査を受けてください。
日齢4~6日目(=生後5~7日目)に採血を実施します。
ごくわずかの血液を赤ちゃんのかかとから採血します。

検 査

検体到着後、検査を行い、受付後
出産した医療機関等に結果をお返しします。

検査結果
  • 正 常

    出産した医療機関等から
    1カ月検診などの受診時に
    結果をお渡しします。

  • 再検査

    出産した医療機関等から
    結果をお知らせします。

    出産した
    医療機関等を受診

    検査結果を確かめるためにもう一度採血をして同じ検査を行います。

  • 精密検査

    出産した医療機関等から
    お知らせして、詳しい検査が
    できる専門医療機関を紹介します。

    専門
    医療機関を受診

    専門医療機関で詳しい検査を行い、本当に病気かどうかを調べます。

新生児マススクリーニングQ&A

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実際にこの検査で患者はどのくらい見つかっているのでしょうか?

本会の1974年から2023年3月までの新生児マススクリーニング検査で見つかった疾患をまとめました。

新生児マススクリーニング対象疾患の発見数と発見率(1974~2023年度)
分類 疾患名 発見数 発見率







アミノ酸代謝異常症 フェニルケトン尿症 76 1/60,526
メープルシロップ尿症 11 1/418,182
ホモシスチン尿症 5 1/920,001
シトルリン血症Ⅰ型 1 1/1,139,891
アルギニノコハク酸尿症 2 1/569,946
有機酸代謝異常症 プロピオン酸血症 23 1/49,560
メチルマロン酸血症 6 1/189,982
イソ吉草酸血症 1 1/1,139,891
グルタル酸血症Ⅰ型 3 1/379,964
メチルクロトニルグリシン尿症 10 1/113,989
複合カルボキシラーゼ欠損症 1 1/1,139,891
3-ヒドロキシメチルグルタル酸血症 0 -
脂肪酸代謝異常症 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 7 1/162,842
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 28 1/40,710
三頭酵素欠損症 1 1/1,139,891
カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅰ欠損症 1 1/1,139,891
カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅱ欠損症 2 1/267,238
糖質代謝異常症 ガラクトース血症 69 1/66,432
先天性甲状腺機能低下症 363 1/2,024
先天性副腎過形成症 170 1/20424

どのように検査を受ければいいですか?

出産した医療機関等で説明を受け、検査内容にご同意の上、検査申込書をご提出ください。

赤ちゃんに病気が疑われた場合はどうなりますか?

新生児スクリーニング検査で病気が疑われる(「精密検査」と言われる)=病気と決まったわけではありません。
確実に診断を行うために出産した医療機関等の指示にしたがって専門の医療機関を受診してください。

質問や問い合わせに対応してもらえますか?

本会では保護者の方からのお問い合わせ等への対応は致しかねます。
検査結果の通知および検査に関するお問い合わせ等につきましては、採血された医療機関にお尋ねください。

東京都における先天性代謝異常等検査の担当部署はどこですか?

東京都における先天性代謝異常等検査の担当部署は、福祉局 子供・子育て支援部 家庭支援課 母子保健担当です。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/taisyaijou.html
(上記リンクから、東京都先天性代謝異常等検査実施要綱をダウンロードすることが可能です)

情報コーナー、リンク

患者さんやご家族の方々、専門医の活動を紹介するHPもあります