公益財団法人東京都予防医学協会

English

拡大新生児
スクリーニング検査
(一般の方向け)

拡大新生児スクリーニングとは

「拡大新生児スクリーニング検査」とは、新たに早期発見・早期治療が可能になった疾患をオプションとして有償で検査するものです。
公費で行う通常の新生児マススクリーニング検査の対象疾患ではないものの、この検査でわかる疾患は、発症前に発見し治療開始時期が早いほど高い治療効果を得られることがわかっています。
大切なお子様の未来のために、拡大新生児スクリーニング検査の受検をご検討ください。

拡大新生児スクリーニング検査で発見できる疾患について

すべての疾患において重症度の高いものから軽症のタイプまで存在します。ここでは重症度が高い場合を中心に解説します。
※脊髄性筋萎縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID)、B細胞欠損症(BCD)は2024年4月から、ポンぺ病(PD)、ムコ多糖症Ⅰ型(MPS1)、ムコ多糖症Ⅱ型(MPS2)は、2025年3月から公費検査の対象となりました。

ライソゾーム病

細胞内小器官のライソゾームに脂肪や糖が蓄積し、さまざまな臓器障害を引き起こす疾患です。拡大新生児スクリーニング検査では、60種類以上あるライソゾーム酵素のうち発生頻度の高い1種類のライソゾーム酵素欠損症が発見できます。

ファブリー病

概 要 ファブリー病は、αガラクトシダーゼAという酵素の働きが生まれつき悪いために発症する疾患です。
小児期に手足や指の痛みで発症し、20歳以降に進行性の腎障害や心肥大を発症します。40歳を超えると腎不全、心不全や不整脈を発症します。これらの症状から本症を疑うことは難しく、発症から診断まで15年を要すると言われています。治療の遅れを防ぐため、新生児期での検査が有用とされます。
男児、女児ともに発症しますが、男児の方が症状は重いのが一般的です。女児の場合はこの疾患があっても、現行のろ紙血によるスクリーニングでは検出が難しいとされているため、本検査は男児のみが対象となります。

治療法 発症後早期に酵素補充療法を開始することで、手足の痛みを和らげ、腎不全や心不全の発症を予防できると考えられています。

検査の流れ

採 血

出産した医療機関等に検査申込書を提出し検査を受けてください。
日齢4~6日目(日齢4日=96-120時間を推奨)に採血を実施します。
ごくわずかの血液を赤ちゃんのかかとから採血します。

検 査

検体到着後、検査を行い、受付後
出産した医療機関等に結果をお返しします。

検査結果
  • 正 常

    出産した医療機関等から
    1カ月検診などの受診時に
    結果をお渡しします。

  • 再検査

    出産した医療機関等から
    結果をお知らせします。

    出産した
    医療機関等を受診

    検査結果を確かめるためにもう一度採血をして同じ検査を行います。

  • 精密検査

    出産した医療機関等から
    お知らせして、詳しい検査が
    できる専門医療機関を紹介します。

    専門
    医療機関を受診

    専門医療機関で詳しい検査を行い、本当に病気かどうかを調べます。

専門医からのメッセージ

東京慈恵会医科大学小児科学講座
講座担当教授
大石公彦 先生

「失わずにすむ命を救う」 これが私たちのミッションです。

近年の医学の進歩により、以前は発見さえできなかった病気を、正確に診断できるようになりました。また、さまざまな薬が開発され、これまでは不治の病と考えられていた病気を治すことが少しずつ可能になってきました。しかし、生まれて間もない子どもたちへの私たちのミッションは未だ完全に達成することはできていません。たとえ正しい診断や良い治療法があっても、病気を発症する前に治療を開始しなければ手遅れになってしまうからです。そのような問題を解決する方法、それこそが新生児スクリーニングなのです。

現在、赤ちゃんの足の裏から少量の血液をろ紙に染み込ませたサンプルを使った検査で、生まれつきに起こってしまう多くの病気が診断できるようになっています。
このような方法で、見た目は健康であっても、将来的に病気の症状が出てしまう子どもたちを、症状が出る前に発見する方法を新生児スクリーニングと呼んでいます。

現在、東京都では20の病気をスクリーニングしています(新生児マススクリーニング検査)。今後はさらに、脊髄性筋萎縮症(SMA)や重症複合免疫不全症(SCID)などの病気もスクリーニングできる「拡大新生児スクリーニング検査」が、東京都で生まれるすべての赤ちゃんたちに提供できるようになります。
「失わずにすむ命を救う」 このミッションによる恩恵がすべての子どもたちに行き渡るよう、東京都の新生児スクリーニングに携わるすべての医療従事者が協力体制を取り、東京都予防医学協会と手を取り合って日々邁進しています。

2023年4月

拡大新生児スクリーニング検査 Q&A

全部ひらく
全部とじる

スクリーニング検査とは何ですか?

数多くの集団の中から病気の疑いが「ある」か「ない」かをふるい分ける検査のことです。
精度よく病気を発見する検査ですが、病気ではない方も拾い上げることがあります。

実際にこの検査の患者発見頻度はどのくらいでしょうか?

2023年4月より開始した拡大新生児スクリーニング検査の成績をまとめました。

2023年度
分類 疾患名 検査数 患者発見数
ライソゾーム病 ポンぺ病 24675 1
ファブリー病 12779※ 0
ムコ多糖症Ⅰ型 24675 1
ムコ多糖症Ⅱ型 24675 0
原発性免疫不全症 重症免疫不全症 24675 1
B細胞欠損症 24675 1
脊髄性筋萎縮症 24675 0
※ファブリー病は男児のみ検査対象

検査は必ず受けなければいけませんか?

検査を希望される方のみが対象です。

どのように検査するのですか?

公費で行う新生児マススクリーニング検査に加えて、わずかな血液を赤ちゃんのかかとから採取します。

検査費用はかかりますか?

拡大新生児スクリーニング検査は有料の検査です。検査費用は出産した医療機関等でご確認ください。

どのように検査を受ければいいですか?

出産した医療機関等で説明を受け、検査内容にご同意の上、検査申込書をご提出ください。

ファブリー病は女児にも発生するとありますが、検査が男児のみなのはなぜですか。

女児の場合は、ファブリー病があっても酵素活性が男児のように低下していないことが多く、現行のろ紙血によるスクリーニングでは検出が難しいとされています(酵素の遺伝子解析が唯一の診断法となります)。そのため、本検査では男児のみを対象としています。

検査結果はいつ頃わかりますか。

受付後、2週間程度で採血された医療機関宛てに結果をお返しします。

赤ちゃんに病気が疑われた場合はどうなりますか?

拡大新生児スクリーニング検査で病気が疑われる(「精密検査」と言われる)=病気と決まったわけではありません。
確実に診断を行うために出産した医療機関等の指示にしたがって専門の医療機関を受診してください。

質問や問い合わせに対応してもらえますか?

本会では保護者の方からのお問い合わせ等への対応は致しかねます。
検査結果の通知および検査に関するお問い合わせ等につきましては、採血された医療機関にお尋ねください。
検査についての詳細は出産した医療機関等にお尋ねください。