Human Papilloma Virus(HPV)について

Human Papilloma Virus(HPV)はいぼ(疣)のウイルスとして有名ですが、最近では子宮頸癌発生に関連するとして注目されています。子宮頸癌死を減らそうと子宮がん検診が行なわれています。以上のような理由で、検診とHPV感染には関連があり、今後の取り扱いが問題になります。HPVと子宮頸癌との関係、HPV感染の特徴や予防法などを子宮がん検診との関連性も含めて解説します。

1. HPVと子宮頸癌

子宮頸部の細胞診で細胞に生じた変化を容易に知り得ます。HPV感染に特徴的な細胞所見は50〜60年前から分かっていましたが、なにが原因でそのような所見が生じるかは分かっていませんでした。1970年代に入り、この所見がHPV感染によることが分かり、さらに子宮頸癌との関連性が明らかになってきました。細胞診を主体として、疫学的な検討がなされていましたが、1980年代には、分子生物学的にHPVと子宮頸癌発生の関係が明らかになり、現在、子宮頸癌はほぼすべての例でHPV感染が関与していると言われています。また、子宮頸癌を引き起こすウイルスの種類(HPVの型)も分かっています。ただし、HPV感染のみで子宮頸癌が出来上がらないようで、これからも解明しなければならない問題があります。HPVと子宮頸癌が密接に関係することから、子宮頸がんの検査として細胞診ばかりでなく、細胞診とHPV検査の組み合わせでより精度の高い検査を目指す取り組みも検討されています。特に、子宮がん検診では、細胞診が陰性でもHPV検査陽性の場合も多く見られるので、検診受診者を木目細かく管理する上からも、将来普及していくと思われます。

2. HPVの種類(型:タイプ)と子宮頸癌

現在知られているHPVは100種類(型)以上あります。HPV型により、外に盛り上がる状態を示す通常皮膚に出来るいぼ(疣)と表面は平らで下方に向かって発育していく平面型とがあり、子宮頸癌と関係するのは後者です。子宮頸癌に関与する型はそれほど多くなく、学者によって数が異なりますが、15種類ほどです。特に、16と18型が有名で、欧米では子宮頸癌の約75%、わが国では約60%がこの型の感染が原因と証明されています。子宮頸癌と関連するHPVタイプは地域によって異なり、欧米では45型が、わが国では58型が多めに証明されています。

3. HPV感染の特殊性

HPVは、大部分性行為で感染します。性行為感染症の一種ですが、一般に言う特定の感染者からうつる性感染症と異なり、性生活のある場合は普通にみられる感染症です。子宮頸部にHPVが感染しても、皮膚に出来るいぼ(疣)と異なり、自覚症状はありません。また、感染しても自然に、また短期間でウイルスが消えてしまいます。感染している時に検査をして初めて感染の事実が分かります。30歳未満では、一般的に30%前後が感染しているデータが多いのですが、最近はこれ以上とする報告もあります。30歳代以降でも約10%に感染を認めます。女性の一生で感染した事実だけでみると、85〜90%は生涯で1度は感染すると思われます。子宮頸癌と深く関わるHPV型を高危険群と言いますが、この高危険群と低危険群(高危険群以外)の感染状況を30歳未満女性で検討した報告をみると、ほぼ同じ割合で感染しています。30歳代以降では、高危険群の感染率は10%台に下降します。
子宮頸癌との関係からみると、高危険群が感染しても大部分の例において自然にウイルスイルは消えて(排出)しまいます。長期持続的な感染が問題になりますが、高危険群HPVが3年以上感染を継続すると癌が発生します。なぜ長期に感染が持続するのか、その原因は分かっていません。
HPV感染を簡単に言えば、「HPV感染は極めて普通にみられ、大部分は自然に治って(治癒)しまう感染症で、たまたま(偶発的に)高危険群が長期に感染する場合に子宮頸癌を引き起こす(発症する)ウイルス感染症です」となります。

4. 感染予防

子宮頸癌の原因がHPV感染と明らかになった時点で、ウイルスであれば“インフルエンザ”や“はしか”と同様にワクチンで予防しようとして研究が開始されました。最近になって、ようやく実用的なワクチンが2種類開発されました。メルク社が開発した商品名ガーダシル(Gardasil*)とグラクソスミスクライン社(G-SK社)が開発した商品名サーバリックス(Cervarix*)です。前者は、平成18年6月アメリカ食品医薬局(Food and Drug Administration)の認可を受けました。後者についても申請予定とのことです。わが国でも、医薬品としての認可を受けることを目的にデータを収集中です。 ワクチンは、感染力を無くした抗原を投与し、抗体を作らせるものです。HPVワクチンは、ウイルスを被ているカプシド(ウイルス本体を除いたウイルス)のみを特殊な方法で作成し、それを抗原とし、体に中和抗体を作らせます。メルク社は、16と18型、さらに6と11型の4種類、G-SK社は16と18型の2種類に対するワクチンです。 ワクチンの効果について、両者とも感染防止効果は16と18型の感染に対してほぼ100%と報告しています。さらに、G-SK社は特殊なアジュバント(免疫増強剤)の使用で、31と45型にも効果を認めると報告しています。ワクチンの効果持続は、投与を始めて日が浅いために、5年間は効果が持続することは分かりましたが、どれだけの期間効果が持続するか分かっていません。 このワクチンはウイルスの単独型にのみ効果があり、型が異なれば効果はありません。また、一度感染してしまうとワクチンの効果が充分に得られないので感染前、すなわち性経験の無い状態で投与することになっています。 子宮頸癌の発生をHPV16と18型ワクチンで、欧米で約75%(45型を含めると80%以上)、わが国で約60%も防止できる可能性は画期的なことですが、これで子宮頸癌に関する問題が全て解決したと言えません。使用法については、これからも検討が必要です。 HPV16や18型以外の感染で生じる子宮頸癌も存在します。欧米で約1/4、わが国では約1/3はワクチン投与の恩恵に与りません。HPV16や18型以外の癌症例を放置できないので、細胞診、細胞診とHPV検査あるいはHPV検査などで子宮がん検診はこれまでと同様に実施しなければなりません。2重の負担になるので、将来HPVワクチン投与が一般化したときには工夫が必要です。HPVワクチン投与、細胞診、HPV検査等を組み合わせて効率的な検診制度を構築し、HPVワクチン投与で検診費用削減を図れる方法を模索しなければなりません。 ワクチンの認可条件として、投与は6ヶ月の間に3回、年齢は9歳から26歳で、推奨する投与年齢は11〜13です。性生活開始前投与でなければならないのであれば、10代初期は当然の年代で、わが国では小学校高学年が中心になります。当然父兄の理解を得ての処置ですが、学校教育の現状から、この年代の児童に子宮頸癌の成り立ちやワクチン投与の意義を教えるのは必ずしも簡単と言いがたいと思います。ワクチン投与を開始したとしても、少なくとも当初は子宮がん検診はこれまでと同じように行なうわけですから、ワクチンの投与費用はこれまでの子宮がん検診に加算することになります。アメリカでは、1回120ドル、3回実施するので360ドル必要です。日本円なら4万円強見込めます。ワクチンの効果持続期間についてまだ分かっていませんが、将来、ワクチン効果の持続期間が短いと分かれば、追加でワクチンを投与しなければなりません。そうなれば、それだけ費用負担が増加します。

*は(R)マーク

PAGE TOP