室内汚染の原因-化学物質による汚染とカビやダニなどによる汚染-

現代人は、一日の大半を室内で生活しています。そのため、居住者は高気密化した室内で様々な物質に暴露され、疾病の危機にさらされています。実際、気密化されたビルで働く人々の間に、目、鼻、喉の刺激、疲れやすい、頭痛、めまいなどの症状の訴えが出てきました。これらの症状はSick Building Syndrome(SBS)と言われるようになり、WHO(世界保健機構)でもSBSを定義しています(表1)

表1. WHOによるシックビル症候群(SBS)の定義

定義 ① 最も頻繁に現れる症状の1つは眼、鼻、咽頭の粘膜刺激症状である。
② 気道下部および内臓を含むその他の症状は頻繁ではない。
③ SBSと在室者の感受性あるいは過剰暴露との関係は明らかではない。
④ 在室者の多数が症状を訴える。
主な症状 ① 眼(特に球結膜)、鼻粘膜および喉の粘膜刺激症状
② 粘膜の乾燥
③ 皮膚の紅斑、蕁麻疹、湿疹
④ 易疲労感
⑤ 頭痛、頻発する気道感染
⑥ 呼吸苦、喘鳴
⑦ 非特異的な過敏症状(鼻汁、流涙、非喘息患者の喘息様症状)
⑧ めまい、吐き気、嘔吐

では、室内が汚染されているとは、一体どのような状態を指しているのでしょうか?一般的に、ある有害物質の室内濃度が外気濃度より高い場合に室内は汚染されていると判断されます(ただし、酸欠の場合を除く)。室内汚染の主な物質は大きく分けてホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOCs)などの化学物質と、カビやダニのような生物学的なものとに分けられます。しかし、これらの室内に存在する有害物質と疾病との関係は、解明が進んでいるものの、不明な点も多く残されています。なぜなら室内では物質が単独で存在するのではないため、複合的な作用機序が考えられることと、様々な物質に対する感受性に個人差が大きいためです。

まず化学物質による室内汚染について考えてみましょう。私たちは、塗料や壁紙等の接着剤などの建築材料だけでなく、日常生活の中で使用される家庭用品(防蟻剤や防虫剤、殺虫剤、芳香剤、ワックス等)などに含まれている化学物質により、日常的に暴露されて生活しています。このようなものから放散される化学物質によって、前述のSBSや中毒事故、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎などのアレルギー疾患、化学物質過敏症、シックハウス症候群などの健康影響が発生します。厚生労働省ではこのような健康被害を防ぐため、平成12年ガイドラインを策定し、(表2)に示した物質について指針値を定めています。

表2. 厚生労働省 揮発性有機化合物の指針値と主な発生源

物質名 濃度 主な発生源
ホルムアルデヒド
100μg/m3(0.08ppm)
接着剤
アセトアルデヒド
48μg/m3(0.03ppm)
接着剤
トルエン
260μg/m3(0.07ppm)
塗料、接着剤
キシレン
870μg/m3(0.20ppm)
塗料、接着剤
パラジクロロベンゼン
240μg/m3(0.04ppm)
防虫剤
エチルベンゼン
3800μg/m3(0.88ppm)
塗料、接着剤
スチレン
220μg/m3(0.05ppm)
断熱材
クロルピリホス
1μg/m3(0.07ppm)
防蟻剤
小児0.1μg/m3(0.007ppm)
フタル酸ジ-n-ブチル
220μg/m3(0.02ppm)
可塑剤
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
120μg/m3(7.6ppm)
可塑剤
ダイアジノン
0.29μg/m3(0.02ppb)
防虫剤
フェノブカルブ
33μg/m3(3.8ppb)
防蟻剤
テトラデカン
330μg/m3(0.04ppm)
塗料、接着剤

このうち、建築材料については建築基準法の改正(平成15年7月1日)に伴い、ホルムアルデヒドの放散量によって建材の格付けが行われることになりました。つまり、この基準によって格付けされた建材のうち、「F☆☆☆☆」を使用すると、温度、湿度、換気量などが一定条件下であれば、室内のホルムアルデヒド濃度が計算上基準値を下回るとされています。実際にこの改正以来、当会で行った室内環境検査においてホルムアルデヒドが基準値を上回って検出されることはほとんどなくなりました。その他の指針値設定物質も同様に検出されなくなっています(図1)。一方で代替物質としてその他の様々な化学物質が使用されています。しかし、代替物質の健康影響については詳しく調査されていないため、今後詳細に検討する必要があると考えられます。また、物質によって建材からの放散量の変化に特徴があり、ホルムアルデヒドは、建材の中心部から放散されるため放散量がなかなか減少しないのに対し、VOCsは建材の表面から放散されるため急激に減衰するといわれています。

図1. 厚生労働省の指針値を超えて検出された割合(%) (当協会調べ)

次に、生物学的なものによる汚染について考えてみます。近年、居住環境におけるダニやカビの被害も増加しています。建築物の気密性が向上したことで室内が過湿になりやすく、結露もできやすくなったこと。さらに、暖房や冷房によりダニやカビが生育できる温度環境になったことが原因としてあげられます。ダニは住まいの至る所に生息しており、その死骸やフンの破片が空中に飛散したときにアレルギーの原因(アレルゲン)となります。アレルゲンとして重要なものはヒョウヒダニの仲間で、これらはヒトの皮屑や垢、カビなどを食べて殖えます。

一方、カビの胞子は部屋の内外を問わず空気1m3あたり60個程度浮遊しています。この程度の量でアレルギーを発症させることはありませんが、風呂場、洗面所などの水回り、押入の中、居間や寝室などに発生し、多量の胞子が空中に飛散するとアレルギー症の原因となることがあります。

ダニやカビ胞子の吸入が原因で発生するアレルギー疾患の代表的なものはアレルギー性ぜんそくで、小児を対象とした調査結果(鳥居ら:図2)では、ぜんそく患者のほぼ全員が室内の塵が原因で発症しており、その約90%がダニの死骸やフンに対して、30%以上の小児がカビに対して皮内反応陽性を示したことが明らかにされています。

ダニは室内の湿度が60%以上、カビも70%以上で、どちらも温度が20~30℃であれば増殖することができます。これを防ぐには室内の湿度を我々が快適に感じる50~60%に保つのが一番です。また、ダニやカビは室内に発生した結露も利用します。断熱材や2重サッシを利用したり、通風をよくすることで過湿や結露発生を防ぐことが大事です。

当会では、室内汚染の原因である、化学物質による汚染だけでなく、カビやダニなどの検査も行っております。これらの検査を通じて安心して室内で過ごしていただくためのお手伝いをしております。

図2. 小児喘息患者における主な環境アレルゲンに対する皮内反応陽性率(鳥居)



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