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甲状腺外来

甲状腺の病気 シリーズ7【甲状腺機能低下症について】

甲状腺機能低下症について

甲状腺機能低下症について
甲状腺機能低下症とは、「甲状腺ホルモン」が不足している状態をいいます。この原因にはあとで述べるようにいろいろあります。

甲状腺ホルモンは、からだのエネルギー代謝を活発にする物質ですから、不足すると代謝が悪くなり、そのためのいろいろな影響がでてきます。血液中のコレステロールの濃度が上がることもあります。成長期の子どもでは、それまで順調だった背の伸びが悪くなります。また乳児期に不足すると、脳の成長に影響し、知能の発達が遅れます。
挿し絵

自覚する症状
自覚する症状は
●むくむ
●寒がりになる
●夏もあまり汗をかかず、皮膚が乾燥する
●髪の毛が全体にうすくなる
●それほど食べないのに体重が増える
●声がかすれる
●ろれつがまわらなくなり、しゃべりかたがゆっくりになる
●便秘する
●しじゅう眠い
●気力がない
●月経異常
などです。からだへの影響や症状は、甲状腺ホルモンがどの程度足りないか、足りなくなってどれくらい経つか、甲状腺ホルモンの不足を感じやすいかどうかなどによって、あったりなかったり、強かったり弱かったりします。

以上の症状はほかの原因でもおこりますので、甲状腺機能低下症のためであるとは限りません。

メモ
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺ホルモンが不足する原因には、次のようにいろいろのものがあります。
橋本病:甲状腺に慢性の炎症がおきている病気で、慢性甲状腺炎ともいいます。炎症があっても甲状腺ホルモンが正常であるあいだは問題ありませんが、炎症が進むとホルモンを作る細胞の数や働きが低下してホルモンが不足します。この不足は数カ月で治ってしまうこともありますが、ずっと続く場合は治療が必要です。
特発性粘液水腫:むずかしい名前が付いていますが、甲状腺が腫れていないのに、甲状腺ホルモンが著しく不足している病気です。原因は橋本病と同じことも多いのですが、甲状腺ホルモンの合成をじゃまする物質でおきている場合もあります。
甲状腺の手術:甲状腺の腫瘍やバセドウ病の治療の目的で甲状腺を切除した場合に、甲状腺機能低下症になることがあります。
甲状腺の放射性ヨード治療:バセドウ病の治療には、放射性ヨードでホルモンを作る細胞を減らして過剰なホルモンの産生を正常にする方法があります。この治療をしたあとに、細胞が減りすぎて甲状腺機能低下症になることがあります。
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薬、ヨード:バセドウ病の治療に使う「抗甲状腺薬」は、甲状腺ホルモンの産生を減らす薬です。従って、必要以上に飲むとホルモンが不足します。この場合は、薬の量を少なくすれば元に戻ります。なお、ヨードは甲状腺ホルモンの材料なのですが、大量に摂取すると、ホルモンの産生が減ってしまう人がいます。ヨードをたくさん含んだ食品(昆布)を毎日食べ続けている時などにおこります。食べるのをやめると早晩治ります。
先天性甲状腺機能低下症:生まれつき甲状腺が無かったりホルモンの合成ができなかったりしてホルモンが不足する場合です。母親が甲状腺の病気であるなしとは関係なく、3000~6000人に1人ぐらいの人がこうした異常を持って生まれます。早いうちに治療を始めないと、知能の発達が遅れますが、現在日本では、だれでも生まれてから1週間以内に甲状腺の検査を受けることになっているので、その心配はなくなりました。
特発性粘液水腫の患者さんから、甲状腺機能低下症にかかった子どもが生まれることがありますがお母さんが出産まできちんと治療を受けていれば手遅れにはなりません。生後数カ月は治療が必要ですが、いずれ治ってしまいます。
下垂体の異常:甲状腺は、脳にある下垂体で作られている「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」に刺激されてホルモンを作っていますので、脳腫瘍などでこの刺激ホルモンの分泌がなくなると、甲状腺ホルモンが不足してきます。大変まれな病気です。
検査
甲状腺ホルモンの不足は血液検査でわかります。

血液中の「甲状腺ホルモン」と「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」の濃度を調べれば、甲状腺ホルモンの不足があるかどうか、どの程度不足しているかわかります。不足するとTSHの濃度が上がり、多すぎると、TSHの濃度は下がるというように、TSHは甲状腺ホルモンの過不足を知らせる信号になります。しかも非常に感度のよい信号なので、その人その人にちょうどあった甲状腺ホルモンの濃度を正確に知らせてくれます。

治療
治療はその人に合った量の甲状腺ホルモンを飲むことです。

回復する可能性のある場合は、数カ月で治りますが、続くときは不足分を服用するという治療をします。甲状腺ホルモンを作る細胞を増やしたり、作る力を回復させたりする薬はありません。カルシウムや鉄分、あるいはビタミンですと、これらを含んでいる食品をとればよいのですが、甲状腺ホルモンは食品には含まれていないので、製剤したもの(チラーヂンS)を飲みます。

たいていは、100マイクログラム(2錠)前後を1日1回服用すれば足ります。時によってまた人によって、ちょうどよい量がこれより多かったり少なかったりしますので、ときどき血液検査をして決めます。

甲状腺ホルモンが著しく不足している場合や、年齢の高い人、心臓に異常のある人は、いきなり100マイクログラムを飲み始めると、心臓に負担がかかりますので、少量から増やしていきます。

飲む量がいったん決まると、その後に急に変わることは少ないので、いずれ半年か、場合によっては1年に1度の検査で済むようになります。
メモ
甲状腺ホルモンの副作用
甲状腺ホルモンは、「薬」とはいっても甲状腺で作られる物質ですから、余分な量を飲みつづけない限り、副作用はまずありません。つまり、甲状腺機能低下症の薬を飲むことはからだによいことはあっても悪いことはない、ということです。
薬の飲み合わせ
甲状腺ホルモンは、他の薬と一緒に飲んでも危険なことがおこる心配は全くありません。ただ貧血の治療薬や胃腸薬のなかには、甲状腺ホルモンの吸収のじゃまをするものがありますので、その場合は8時間ほどあけて飲む必要があります。医師や、薬剤師の指示を受けてください。なお一緒にとって問題のおこる食べ物はありません。

経過
甲状腺ホルモン濃度が正常に近づくと、症状は次第にとれます。薬を飲み始めて2週間もするとそれが感じられます。甲状腺ホルモン不足によるいろいろな臓器への影響も早晩なくなり、成長期の身長の伸び悩みも解消します。治療をしてもよくならない原因のうち一番多いのは、甲状腺ホルモンの飲み忘れです。たまに忘れるくらいでしたら影響はありませんが、飲み方がしじゅう不規則になるのは好ましくありません。なお、適切な治療で甲状腺ホルモンの不足がない状態になってもとれない症状や、新たにでてくる症状は、甲状腺機能低下症のためではありません。
日常生活
治療しないでいて、甲状腺機能低下症が長いこと続いて心臓に影響がでている場合は、ある程度の安静が必要です。

血液中の甲状腺ホルモン濃度が正常になって、甲状腺機能低下症の影響がとれれば、日常生活で注意することは何もありません。

ヨードが原因で甲状腺機能低下症になっている場合は、海藻のうち昆布をわざわざ毎日とることだけはさけてください。そのほかの海藻は毎日でも問題ありません。

挿し絵

百渓尚子

2011.2