保健会館クリニック イメージ

甲状腺外来

甲状腺の病気 シリーズ2【バセドウ病について(改)】


表紙

バセドウ病とは
バセドウはドイツ人医師の名前です。人名がつくとむずかしい病気と思われがちですが、バセドウ病が奇病のように思われているのは日本だけです。ほかの甲状腺の病気と同じように、男性より女性に多いのが特徴です。200~500人に1人ぐらいの人がかかっているといわれています。

バセドウ病は、甲状腺を過剰に刺激する物質が原因で、甲状腺ホルモンが過剰になる病気です。この状態を甲状腺機能亢進症といいます。甲状腺ホルモンは、からだの代謝を促し、子どもでは心身の成長に関わる重要なホルモンですが、多すぎると体が運動を強いられているような状態になって心臓をはじめいろいろな臓器に負担がかります。目が出たり、まぶたがはれたりすることもありますが、これは甲状腺ホルモンの過剰とは直接関係ありません。

甲状腺機能亢進症がおきるのはバセドウ病だけではありませんが、日本では90%がバセドウ病によるものです。

症状
挿し絵
●甲状腺のはれ
●動悸
●息切れ
●手のふるえ
●多汗
●暑さに弱い
●疲れやすい
●体重が減る
●微熱
●イライラする
●下痢
●月経不順
●その他
挿し絵
挿し絵 挿し絵
甲状腺ホルモンの過剰な状態のままにしておくと、心臓や、肝臓の機能や骨密度に悪い影響が出ます。
バセドウ病であっても、治療で甲状腺ホルモンが正常になっていれば、からだに異常がでることはありません。異常があれば他のことが原因です。
過剰な甲状腺ホルモンによって影響を受ける臓器や症状には個人差があり、どの人にも同じように症状が出るわけではありません。

検査
血液検査
  甲状腺ホルモン(FT4、FT3)濃度の測定
甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度の測定
甲状腺を刺激する物質(TRAb)の測定
TSHはだれにもあり、TRAbはバセドウ病の人にあります。
これが消えると治った可能性があリます。
放射性ヨード(アイソトーブ)検査
  血液検査だけで診断がつきにくい時におこなう検査です。甲状腺にヨードがどのくらい集まるかをみます。
治療
甲状腺ホルモンが過過剰に作られないようにする治療をします。それには次のページにあるように内服薬(抗甲状腺薬、場合によリヨード薬)、放射性ヨード(アイソトープ)※、手術の3つの方法があります。まず内服薬で治療してみますが、これが合わないとき(表の「欠点」の項参照)には、ほかの治療に変えます。
治るまでどれぐらいかかるかは人によってさまざまで、数カ月の人もいれば10年以上治療を続ける人までいます。治っていなくても甲状腺ホルモン濃度が正常であれば、バセドウ病でないのと同じで、健康に生活できます。
放射性ヨードの入ったカプセルを服用する治療で、からだの外から放射線を照射する治療ではありません。

  抗甲状腺薬治療 放射性ヨード
(アイソトープ)治療
手術
(甲状腺亜全摘出術)





●あらゆる人に合う(妊娠中を含む)

ことに薬をきちんと飲む人に適している

バセドウ病になって半年以内の人、甲状腺のはれの小さい人、TRAb濃度がそれほど高くない人がこの治療で治りやすい
●18歳未満、妊婦、授乳婦以外で

薬の副作用がでた人
薬で治りにくい人
忙しくて通院困難な人
近い将来妊娠の予定がない人
●薬で副作用がでる人
薬で治りにくい人
甲状腺腫の大きい人
早く治したい人
忙しくて通院困難な人

●甲状腺に腫瘍がある人


●特別な技術や設備がいらずどこでもできる ●薬より短期間で治る
●副作用がない
●いったん効いたら再発しにくい
●ほかの治療より早く治る
●再発が少ない


●治りきるまでに時間がかかることが多い
●いったん治っても再発が多い
●副作用がでることがある
●甲状腺機能低下症になることが多い
●治療後6ヵ月は妊娠を避ける必要がある
●目の症状を悪くすることがある
●入院が必要
●まれに傷跡が目立ことがある
●まれに声がかすれたり、からだがしびれたりする
●甲状腺機能低下症になることがある

日常生活
血液中の甲状腺ホルモンが過剰の間は、からだが普段より活動している状態になっています。高い気温、スポーツ、からだに負担となる仕事は避けてください。治療中でも甲状腺ホルモン濃度が正常になれば、普段通りの生活で差支えありません。ただし個人差がありますので、医師の指示に従ってください。妊娠を希望される方は、医師にご相談ください。また他の病気で他院に入院する場合も、甲状腺の状態を伝える必要がありますので必ず医師にご連絡ください。
食事
バランスがとれていれば普段通りの食事で結構です。ヨード(主に海藻類)は、放射性ヨードの検査や放射性ヨード治療の時に限り、一時的に制限するよう指示されます。それ以外のときは普段通りに食べて結構です。
バセドウ病によくないものは特にありませんが、1つだけ避けた方がよいものがわかっています。それは喫煙です。タバコはバセドウ病を治りにくくしたり、目の症状を悪くすることあります。アルコール類は肝臓の機能に異常がなければ問題ありません。

注意点
抗甲状腺薬治療の場合
  • 副作用について医師と薬剤師から必ず説明を受けてください。
  • 服用開始後2~3カ月程たつと、血液中の甲状腺ホルモンが正常になり、調子がよくなってきますが、服用をやめると元に戻ってしまいますので、指示があるまで続けてください。
  • 併用してはいけない薬はありません。
  • 何かの都合で来院できず、何日も薬がなくなってしまうような時にはご連絡ください。
自然に治る甲状腺機能亢進症
バセドウ病とそっくりで1~3カ月ほどで自然に治ってしまう甲状腺機能亢進症があります。これは橋本病の患者さんに時々おこるものですが、バセドウ病が治まっているときにおきることがあります。甲状腺に炎症がおきて、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出るためにおこるもので、痛みがないので「無痛性甲状腺炎」といいます。よくおこるのは産後です。バセドウ病のようにホルモンが過剰に作られるものとは違い、バセドウ病の薬は全く無効です。ホルモンが過剰になったあと、逆に甲状腺ホルモンが減って甲状腺機能低下症になることがありますが、これも大抵は自然に治ります。

挿し絵

百渓尚子

2011.4